39 AIで代替できない仕事をつくろう

産業側のサポートで新たな成長市場に

現代社会において、AIやロボット技術の進化は目覚ましく、あらゆる産業において業務の効率化や自動化が進められている。正確性やスピード、あるいはデータに基づく最適な結果を導き出す点において、AIは人間を遥かに凌駕する能力を持ちつつある。このような時代において、仕事の効率化にはAIの活用が極めて有効であることは間違いない。

しかしその一方で、効率や結果だけを追い求めるのではなく、「プロセス自体を楽しむ」という人間特有の活動の価値が相対的に高まっている。試行錯誤を繰り返し、他者と対話しながら何かを創り上げる喜びや、そこから生み出される感情の共有は、決してAIやロボットには完全に代替できないものだからだ。

そうした中で、建築分野はまさに「人間の最後のフロンティア」と呼ぶべき重要な領域である。建築は単に雨風をしのぐ物理的な空間を提供するだけにとどまらず、人間の身体性を伴う創作活動としての可能性を大きく秘めている。自らの手と体を動かし、素材の質感や空間の広がりを感じながら場を作り上げていく行為には、AIが入り込むことのできない根源的な人間らしさが宿っている。

実際、建築における建材や仕上げについて「どんな空間が心地よいか」「どのような機能が便利か」といった生活実感に基づく議論は、専門家と一般ユーザーの立場に関係なく対等に語り合えるテーマであり、人間同士の豊かな対話のきっかけとなる。

広がる身体性を伴いプロセスを共有する活動

このような身体性を伴いプロセスを共有する活動は徐々に広がりつつある。例えば、ある賃貸住宅の大家は、入居前に入居者の要望を聞き、一緒に壁紙などの内装を決めるというDIY賃貸の取り組みを始めている。この過程において、入居者と大家の間で深いコミュニケーションが生まれ、単なる空間の貸し借りを越えた新しい関係性が構築されている。また、DIYやカスタマイズが可能な建材が注目を集めているのも、人々が自らの手で暮らしの空間を編集するプロセスそのものに価値を見出している証拠である。

身体性を伴いプロセスを共有する活動は、一般市民を巻き込んだ地域社会の再生までスケールを広げている。例えば、鹿児島のコミュニティ大工や、北九州のビルリノベーションといったまちづくりの取り組みがその好例である。

これらのプロジェクトでは、専門の職人だけでなく地域の住人や一般市民が参加し、古い空き家やビルの再生作業に共に汗を流している。参加者たちは、DIYやリノベーションの作業を通じてプロセス自体を楽しみ、そこから生じるコミュニケーションによって強いコミュニティの絆を育んでいる。産業側がこうしたニーズを汲み取り、サポートしていくことで、まったく新しい成長分野にしていくことも期待できそうだ。