10 3Dプリンター住宅の社会実装へ

職人不足と住宅価格高騰の解決策にも

本の住宅産業は少子高齢化に伴う職人不足、円安や物流コストの上昇などによる住宅資材高騰など苦しい状況が重なっている。労務費や資材費は住宅そのものの価格転嫁にもつながり、生活基盤である住まいを適切な価格で供給することが難しくなっている。これまで住宅業界は、プレハブ化やDX化を進め、効率化を図ってきた。しかし、現場での人手による組み立てを前提とする限り、労働力不足を克服することはできない。こうした住宅建築における様々な課題を解決するための一手として、3Dプリンター住宅がある。

3Dプリンター住宅とは、建築用3Dプリンターがコンピューター上の設計モデルに基づき、コンクリートなどの素材を層状に積み上げていく工法である。最大の利点は、施工の自動化・省人化による効率性にある。設計データさえあれば24時間体制で躯体を造形でき、人間の作業を最小限に抑えることで、従来の数ヶ月を要した工期を数日にまで短縮できる。これが人件費削減を可能にし、低価格での住宅供給が実現できる。

日本では、近年3Dプリンター住宅の開発が活発に進められている。セレンディクス社が2022年に国内初の3Dプリンター住宅「sphere(スフィア)」を300万円台で販売開始し、翌年には二人世帯向けも開発。その後、能登半島地震やウクライナでも3Dプリンター住宅で復興支援し、現在は量産体制を目指している。25年12月には、築(宮城県)とオノコム(東京都)の2社が国内で初めて2階建ての3Dプリンター住宅を完成させた。それまで、3Dプリンター住宅は構造強度の担保や法規制の壁から平屋の小規模建築に限定されていたが、現場で基礎から2階建て構造体までをつくり上げ、可能性を広げた。

3Dプリンター建築用の技術基準策定へ

3Dプリンター住宅は環境面でも優位性を持つ。必要な分だけを積層するため、従来の現場で発生していた大量の端材や廃材を最小限に抑え、リサイクル素材の活用も容易にする。デザイン面でも、従来の直線構造に縛られない自由な曲面を実現でき、画一的な住宅景観を刷新する可能性を秘めている。

普及に向けた最大の障壁は、既存の建築基準法だ。現行法は木造やRC造といった従来工法を前提としており、3Dプリンターによる積層造形を正当に評価・受理する枠組みが不足している。安全性の管理は厳格であるべきだが、過度な制限は日本の技術を世界から孤立させ、産業の衰退を招くだけだ。実証データの蓄積を加速させ、3Dプリンター建築に最適化された技術基準の策定と、建築確認申請の簡素化が求められている。

3Dプリンター住宅は、省人化・工期短縮・コスト削減という建設業の課題を解決する力を秘めている。この技術を社会のインフラとして定着させ、実装を加速していくべきだろう。