持家取得で終わらせず、気軽に住み替えられる環境整備を

マイホームが“夢”であった時、「住宅すごろく」という言葉があった。進学や就職で実家を出て賃貸住宅に、いつかは持家一戸建てという夢を描く。結婚して新たな家族ができた時など、ライフステージの大きな変化のなかで住宅を購入する。時代の変化とともに住宅を持つことによるステータスの意味も加わり、そのゴールは郊外の一戸建住宅から都市中心のタワーマンションに移り変わった。
日本は戦後の住宅不足の時代から持家政策を進め、1970年から現在まで50年にわたり持家率は約60%で安定的に推移、内需拡大、国民の資産形成などの社会的に大きな効果を生んだ。しかし、その一方で人口減少下での家余りにつながり、空き家問題が深刻化している。また、長期にわたる住宅ローンはライフスタイルの変化に応じた柔軟な住み替えを阻害した一面も持つ。住宅産業の「フローからストックへ」の転換は、単に新築住宅供給からストック住宅の活用にシフトするだけでなく、新築による持家取得を中心とした枠組みそのものを変えていく必要がある。
一方、もしかするとマイホームが再び「夢」となる時代が来るかもしれない。住宅価格が高騰、特に都市中心部では異常なほど高額となり、一般世帯の手が届かないものとなりつつある。また、持家率の内訳をみると、高齢者の持家率が高く維持される一方で、若年世帯の割合が低い状態が続いてきた。世帯人数と居住面積のギャップも小さくない。国土交通省の推計によると、高齢単身・夫婦の持家世帯で100㎡以上に住んでいる割合は約54%である一方、4人以上世帯の持家世帯が100㎡未満の住宅に住んでいる割合は約32%だ。
長いローンを組み“一生ものの住まい”を目指すのではなく、もっと柔軟性をもって住み替えられるようにしたい。
社会全体で引き継ぐ
そんな考え方を
もちろん住宅そのものは長く大切に使い続け、次世代に引き継いでいくことが重要だ。しかし、個人ではなく、社会全体で暮らし継いでいく、そんな考え方が広がらないだろうか。個人所有の“一生もの住まい”でないからこそ、修理・メンテナンスし、リフォームして流通させる。
そのためには、ライフステージに応じ、もっと気軽に住み替えられる住まいが必要だ。例えば、子育てに特化した住まいに暮らし、子どもが独立したら夫婦二人向けの住まいに住み替える。それが立地を問わず可能になれば、選択肢は大幅に広がる。さまざまな住ニーズに応える賃貸住宅が供給されれば、特に持ち家にこだわる必要もなくなる。さらに住宅ローンもノンリコース型を広げるなど、住み替えの環境整備も進めたい。住まい選びをめぐる環境を大きく変えることで住産業の枠は大きく広がるだろう。

