32 クローズドシステムを辞めよう

60万戸時代の柔軟性、持続可能性を確保する

戦後の日本の住宅産業は、深刻な住宅不足を解消するため、住宅の工業化や部品化を推進し、良質な住宅を効率的に供給することを目指してきた。

その後、社会の要求が量的な充足から質的な向上へと移り変わる中、住宅事業者各社は熾烈な競争を繰り広げた。その過程で業界の主流戦略の一つとなったのが、独自工法を開発し、自社陣営のみで運用する「クローズドシステム」である。特にプレハブ住宅と呼ばれる工業化住宅や、住宅フランチャイズ(FC)、建材メーカーなどは、他社には真似のできない独自の工法を開発し、それを強力な付加価値として消費者に訴求することで差別化を図ろうとしてきた。

右肩上がりの市場環境においては、この囲い込み戦略は極めて有効に機能した。しかし現在、住宅産業は歴史的な転換点にある。人口減少に伴い新設住宅着工戸数は減少の一途をたどり、建設現場では深刻な作り手(職人)不足が常態化している。こうした過酷な市場環境下において、かつて企業の成長を支えたクローズドシステムでの運用が、今や業界の大きな「足かせ」となっている。

クローズドシステムがもたらす3つの問題

第一の問題は、ビジネスモデルの硬直化と採算性の悪化である。クローズド工法は閉鎖的なシステムである。事業として成立させるには一定規模の販売量(着工数)を常に維持しなければならないが、市場全体が縮小する中でそれを確保することは容易ではない。販売量が減少し採算ラインを下回ったとしても、システムに汎用性が乏しいため、他社に部材を供給するなどの新たな需要先を確保することは極めて困難である。

第二に、施工現場の実態との乖離である。現在、一般的な施工者や大工の多くは、オープンな規格である在来軸組工法やツーバイフォー工法には精通している。しかし、メーカー独自の特殊な金物やパネル、複雑なマニュアルに縛られるクローズド工法の施工は、一般的な施工者にとっては扱いが難しい。ただでさえ深刻な職人不足にさらに拍車をかける結果を招いている。

第三に、建物の持続可能性(サステナビリティ)を低下させてしまう懸念があるということ。クローズド工法で建てられた住宅は、構造や納まりがブラックボックス化していることが多い。そのため、将来のライフステージの変化に合わせて間取り変更などのリフォームを行おうとしても、建築した元の事業者以外の事業者が建物に手を入れることが技術的にも保証の面でも非常に困難である。

もはや、一企業による技術の囲い込みで利益を上げる時代は終わったと言わざるを得ない。新築市場が縮小し、良質なストックの活用が求められる今後、住宅産業界はクローズド工法から勇気をもって脱却すべきである。