18 建物の価値を適切に評価しよう

価値の「見える化」へ

日本の住宅市場には、世界的に見て異常な「常識」が根付いている。木造戸建住宅の場合、築22年の法定耐用年数を経過した時点で、建物の資産価値を「ゼロ」とみなす慣習である。欧米では適切な管理によって住宅価値が維持、あるいは向上することが当然であるのに対し、日本では未だにこの習慣のもと、短期間でのスクラップ&ビルドが繰り返されている。

住宅の建物価値が短期間で失われてしまう背景には、税法上の法定耐用年数がある。木造22年、RC造47年という一律の基準が、市場における物理的寿命や経済的な価値と混同されている。また、金融機関が築年数の経過した建物の担保価値を認めない、居住者が適切なメンテナンス、リフォームをしたとしても販売する際に価値として認められないといった状況が重なり、中古住宅市場が形成されてこなかったことも原因にある。

木造平均寿命は約70年

早稲田大学の小松幸夫名誉教授らが2021年の固定資産台帳を分析した日本の建物の約9割をカバーする悉皆調査によれば、木造住宅もRC造住宅も、実際には60年から70年近くもっていることが明らかになった。特に木造住宅の平均寿命は「68・95年」に達していた。適切な維持管理を行えば、木造もコンクリートも100年を超えて住み継ぐことは、物理的に十分可能だといえる。早稲田大学理工学術院 創造理工学部建築学科の田辺新一教授は「建物が70年もつのであれば、価値をゼロにせず、適切にリノベーションして使いこなすことこそが、最も環境負荷が低く、経済的な選択肢だ」と語る。

今、求められているのは、建物の状態を正当に評価し、資産価値を「見える化」する仕組みづくりだ。事例の1つとして、大手住宅メーカー10社による共同の取り組み「スムストック」がある。独自の査定システムを構築し、優良な既存住宅が正当に評価され、売買される市場を構築している。特筆すべきは、建物を「構造躯体」と「内装・設備」に分けて評価する「スケルトン・インフィル分離評価」の導入だ。耐久性の高い構造躯体を最長50年で償却する独自の査定方式により、適切に管理された建物の価値を長期間維持することに成功している。実際に、これまでに成約した築21年以上の物件の建物価格平均が657万円となるなど、市場が正当な価値を認めれば資産として残り続けることが証明されている。

こうした資産価値の「見える化」を一部の取り組みに留めてはならない。断熱性能や耐震性能、維持管理の状態を客観的に評価する基準を業界全体で標準化し、それを金融機関の担保評価に反映させることが不可欠だ。金融の適切な評価が広がれば、ストック市場の拡大につながる。

なにより大事なのは、消費者の意識変革である。住宅を「一生に一度の消費」と捉えるのではなく、次世代へ引き継ぐ「社会的な資産」として育てる意識を持つことが不可欠だ。住宅資産の適切な価値評価システムを標準化し、住まいを「資産」へと変える。そのための意識変革と仕組みづくりを進めるべきである。