QOLを高め、死ぬ直前まで楽しく豊かな暮らしを

2025年4月、警察庁が取り扱った遺体のうち自宅で一人で死亡した、いわゆる「孤独死」の人数を初めて集計した。2024年は全国で7万6020人であり、年齢別では85歳以上が1万4658人と最も多い。2025年も上半期までの暫定値が公表されており、全国で4万913人、このうち65歳以上の割合は3万1525人となっている。
高齢化が進み、単身世帯が増加するなか、今後、この数字は上昇していくとみていいだろう。問題のさらなる深刻化が懸念される。
23年に孤独・孤立対策推進法が成立、24年に施行となり取り組みが進められている。例えば、スマートメーターなどを活用した安否確認など官民連携による見守りサービスの普及、地域での適切な支援につなげるボランティア「つながりサポーター」の育成、また、24時間対応の相談体制などの整備も進む。
孤独死・孤立死の問題は、経済的、社会的に深刻な負の連鎖を引き起こす。住宅業界では事故物件となり資産価値の低下に結びつくことが分かりやすい例だが、埋葬費用や遺品整理といった社会コストの増加なども指摘される。そもそも孤独死・孤立死が起こること自体、セーフティネットが機能していない、行政サービスが行き届いていないといった状況にあるとの指摘もある。
こうした問題について、住宅産業界はやれることがあるのではないか、住宅産業界だからこそできる取り組みがあるはずだ。
たまり場や居場所で交流の仕掛けづくりを
孤独死・孤立死の本質として生存中のQOL=生活の質の低さを指摘する声がある。単に「一人で死ぬ」ことが問題なのではなく、死ぬ前段階で身体的・精神的・社会的な豊かさが失われていることが問題だという見方だ。
例えば、セルフネグレクト。外部との接触を断ち、精神的に生活の質が維持できなくなり、生存意欲が減退、自ら“穏やかな自殺”に向かう。孤独死・孤立死の中にはそうした人が少なくないという。これは決して高齢者だけの問題ではなく、若年層も例外ではない。
直接的に一人ひとりに向かい合うのも、安心して死ねるよう死後の対処を準備するのも難しいかもしれない。しかし、QOLを高めるような、社会のなかでの居場所づくりは住宅産業の領域だ。
まちづくりや集合住宅づくりにおいて、見守りといったサービス提供にとどまらずコミュニティ形成に積極的に関与していく、また、周辺居住者も巻き込んで多世代が交流するような仕掛けづくりを加速させることも一つだろう。シェアスペース、コミュニティスペース、たまり場や居場所といった空間づくりのノウハウは住産業が持っているはずだ。
孤独死・孤立死というと、どうしても重苦しくなるが、「ピンピンコロリ」という言葉があるように、死ぬ直前まで楽しく生きられるような暮らしを描きたい。

