24 日本版HOAを普及させよう

住まいの価値は自分で守る

日本の住宅市場は長年、新築住宅を尊ぶ「スクラップ・アンド・ビルド」の文化に支配されてきた。しかし、人口減少と空き家問題が深刻化する現在、求められているのは「いかに長く、価値を維持しながら住み続けるか」という視点。ここで注目すべきが、米国の住宅地の価値を支える組織である、HOA(Hoⅿeowners Association:住宅所有者組合)の仕組みである。

米国におけるHOAは単なる自治会ではなく、その役割は多岐にわたっている。

例えば、HOAは「CC&R(Covenants︐Conditions︐ and Restrictions)」と呼ばれる厳しい規約を運用している。この規約に基づき、外壁の色、芝生の手入れ、庭に置く備品、さらには駐車する車両の種類に至るまで細かく制限される。これにより「街並みの統一感」が保たれ、近隣物件の放置による資産価値の下落を防いでいる。

また、HOAは、プールやクラブハウス、街灯、道路といったインフラの維持管理を住民の賦課金で賄う役割も担っている。良好な管理状態は、中古市場における買い手へのアピールとなり、「この街なら安心して買える」という信頼を生む。米国では、HOAが存在する地域の不動産価格は、存在しない地域に比べて有意に高いという研究結果も示されている。

HOAというガバナンスが住宅を資産化する

日本でも、分譲マンションの管理組合は、HOAに近い組織だと言っていいだろう。しかし、戸建住宅街においては、町内会のような任意団体による緩やかな繋がりが主である。

日本でも変化の兆しが見える。一部の分譲住宅事業などにおいて、デベロッパーや住民が主体となった「エリアマネジメント」を導入したり、分譲マンションのような管理組合を設立する動きもある。

日本が真に豊かな住環境を実現するためには、HOAの仕組みを戸建て住宅地においても本格的に導入すべきである。そのためには、まず法的・制度的枠組みの整備が必要になる。現在の日本では、分譲マンション以外で住民に管理義務を課す法的根拠が弱い。戸建て分譲地においても、管理費の徴収や規約の遵守を不動産登記と紐付けるなど、実効性のある法的枠組みを検討すべきではないか。

加えて、日本の消費者は住宅の「管理費」をコストと考えがちだが、これを「資産価値を維持するための投資」と捉え直す必要もある。

住宅は人生最大の買い物であり、その価値は個々の家屋の性能だけでなく、それを取り巻く「環境」によって決まる。米国のHOAの仕組みは、私有財産への制約を伴うものの、結果として住民全体の利益を最大化する仕組みでもある。

住宅を「次世代へ引き継ぐ資産」へと昇華させるためには、HOAというガバナンスの導入を本格化させるべき時期が来ている。