34 公的住宅を見直そう

今こそ膨大なストックを持つ公的住宅の出番

今、公的住宅の役割を見直す時期をむかえているのではないだろうか。

住宅価格が高騰し、都内など都市中心部では一般世帯が手が届かなくなりつつある。新築マンションのみならず、中古マンション、戸建の中古住宅も上昇傾向にあるなか、ファミリー世帯の住宅取得は郊外へと広がりつつある。需給バランスのみならず地価上昇、資材価格の高騰が背景にあり、住宅価格が下がる要因は見当たらない。加えて、住宅ローンの金利上昇もあり、住宅取得環境は悪化の一途をたどっている。一方、賃貸住宅の家賃も新築、既存物件を問わず上昇傾向にある。

住まいの確保が難しくなるなか、手頃な価格で住むことができる「アフォーダブル住宅」に注目が集まり始めている。例えば、東京都は、官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンドにより、市場の家賃よりも2割程度抑えた住宅を計300戸供給する。加えて、東京都住宅供給公社と連携し、既存住戸を活用して従来賃料よりも2割程度安い賃貸住宅を年間200戸、計1200戸供給する。

340万戸のストックを活かせ

戦後、低廉な家賃での住宅は住宅供給公社、公団、都道府県や市町村などによる公営住宅が担ってきたが、持家政策の進展や民間賃貸住宅市場の成熟などを背景に、セーフティネットとしての役割へとシフトしてきた。その一方で、低所得者優先の施策によるコミュニティの崩壊、高齢化の進展といった弊害も指摘されている。さらにバリアフリー化が進まないなど、既存ストックの更新に手が回らず、現代の暮らしにマッチしない住宅も少なくない。こうしたことが入居者の減少、空き家化を進め、負のサイクルに陥っている住宅団地もある。

一方、セーフティネットについては、民間賃貸住宅を登録し家賃補助や居住の支援という形で進められている。もちろん住まいのセーフティネットを社会的に用意し、誰もが安心して暮らすことができる社会とすることは非常に重要だ。ただ、低所得者のみならず中間所得者ですら職場の近くに住まいを確保することが難しくなっており、“手頃な価格”で暮らすことができないことが問題となってといる。

今一度、公的住宅のあり方を見直したらどうだろうか。公的賃貸住宅のストックは約340万戸に及ぶ。これらの中には募集停止も含めて多くの空き家が存在する。立地などの適正を踏まえて、それぞれでセーフティネットとアフォーダブルの役割を考えたり、一つの団地で混在させたり、さまざまなことができるはずだ。

これまで供給してきた膨大な数の社会資産であるストックを、時代にあわせた持続可能なインフラとして更新することが求められる。それは子育て世帯や若年層を呼び戻すことでコミュニティの活性化、孤独・孤立の防止にもつながるはずだ。