31 住宅事業者に国内還元指標を

実現が難しいからこそ競争優位に

年のハウスメーカー各社の決算を見ると、持家事業が苦戦し、注文住宅の価格が5000万円を突破するような厳しい市場環境の中にあっても、賃貸請負や管理、分譲事業などで収益力を強化し、最高売上や最高益が続出している。

また、各社は海外事業をさらに強化・拡大しており、いまやハウスメーカー各社にとって海外事業は収益の大半を稼ぎ出す最大の柱となっている。

一方で、日本の住宅産業は長年、内需拡大のけん引役として期待され、国からさまざまな手厚い保護や支援を受けてきた歴史がある。現在でも、国土交通省が主導する住宅支援事業は継続している。こうした背景があるにもかかわらず、ハウスメーカーのグローバル化が急速に進展する中、「長年手厚い支援を受けて成長した企業群は、現在どのように国内市場や日本社会に貢献しているのか」という疑問が生じるのは自然なことである。

この問いに答えるための有効なアプローチとして、「住宅事業者に国内還元指標を」という考え方が浮かび上がる。これは、国内への貢献が少ない企業を罰するための仕組みをつくろうというものではない。そうではなく、国内の社会課題解決に向けてより積極的な取り組みを行う企業が、市場や社会全体から正当に評価される仕組みを構築すべきではないか、という提案である。

この国内還元への取り組みを、単なる「義務」や「コスト」として終わらせず、企業成長の源泉とするために不可欠なのが、CSV(共有価値の創造)経営の視点である。CSVとは、義務として守るべき規範であるCSR(企業の社会的責任)とは異なり、企業が本業を通じて環境や社会にプラスの価値を生み出しつつ、自社独自の戦略で他社が得られない上乗せの利益を得ようとするアプローチである。

従来、社会への貢献(社会価値)と利益の追求(経済価値)はトレードオフの関係にあると考えられてきた。しかし、CSV経営においては、儲けることと社会貢献は決して相反するものではない。

これまで市場ニーズの外にあると見なされてきた社会ニーズを市場原理によって解決することで、新たな市場を創出することが可能になるからだ。社会や環境に貢献する投資を行い、それが本業の利益として返ってくるビジネスモデルをデザインするには、極めて高い能力が必要とされる。しかし、利益と社会貢献を同時に追求することが難しいだけに、それを実現した企業は他社が容易には真似できない強力な競争優位を築くことができるのである。

住宅事業者が国内に向けてCSVを実践していくためには、コミュニティやまちづくりといった社会インフラの整備というマクロな視点を持つことが重要である。これまで培ってきた高い技術力やノウハウを活かし、「クロスセクターアライアンス(業種やセクターを越えた提携)」を通じて水平展開していくべきだ。