30 中低層建築の木造化を推進しよう

新たな成長市場への挑戦

現在、日本の建築業界は大きな転換期を迎えている。脱炭素社会の実現に向けた「都市(まち)の木造化」が国策として推進される中、特に注目されているのが「中低層の中大規模木造」市場だ。

この分野の重要性が高まっている背景には、「住宅市場の縮小」と「法改正」の後押しがある。人口減少に伴い新設住宅着工戸数が減少する中、持家(注文住宅)は2年連続で10%以上の落ち込みを見せている。一方で、非住宅や中高層建築の木造率は、低層住宅(80%超)に比べ、非住宅で約15%、中高層では1%以下と極めて低いのが現状だ。低層住宅以外の非住宅・中高層建築物の木造率「5.8%」こそが、今後の成長ポテンシャルを秘めた新市場といえる。また、2022年施行の通称「都市の木造化推進法」により、木材利用の対象が公共建築物から民間建築物へと拡大されたことも、追い風となっている。

この分野を推進することは、「住宅事業者」「投資家」「社会・環境」の三方に大きなメリットをもたらす。

住宅事業者は、戸建て住宅で培った技術を中低層建築(事務所、店舗、倉庫など)へ応用することで、既存事業の活性化と経営の安定化が図ることができる。大規模な木造建築を手掛けることは、技術力の証明となり、人材採用や住宅受注にも好影響を与える。

投資家への新たな価値提案にもなる。木造マンションはRC造に比べ建設コストを10~30%削減でき、工期も短縮可能。さらに、エンジニアリングレポートの活用によりRC造同等の耐用年数評価を得つつ、節税対策として減価償却期間を柔軟に選択できるなど、投資対象としての魅力も高まっている。

社会・環境への貢献の面からも注目されている。木材は炭素貯蔵効果がある循環型資源であり、鉄骨造(S造)に比べ、平屋などの特定条件では躯体費を約15%削減できる事例もあり、環境負荷低減と経済性の両立を可能にする。

一方で、市場の期待に対し、参入には依然として高い壁が存在することも事実だ。まず、技術と耐火の壁がある。特に4階建て以上では高度な構造計算や耐火性能が求められる。これに対し、3時間耐火を実現する「COOL WOOD」や、石膏ボードの使用量を抑える「AQ木のみ構法」、壁倍率を大幅に高めた「SE構法Ver.3」など、ハード面の技術開発が急速に進んでいる。

また、コストとノウハウの壁もあるが、この「いくらかかるか分からない」という不安に対し、プレ設計・プレ積算された「WHフレームシステム」のような、一般流通材を活用してコストを可視化する仕組みも登場してきている。

中低層木造の推進は、単なる建築手法の選択ではなく、地域経済と環境を守るための「共創」の取り組みとしても注目されている。プレカット工場や構造設計事務所と連携し、住宅用インフラを最大限に活用することで、非住宅市場という新たな「青い海」を切り拓くことが求められている。