失われゆく日本の住文化を守る

日本の住宅から和室が急速に姿を消している。2017年度の「フラット35住宅仕様実態調査」のデータによれば、全国では5割、首都圏では7割の住宅において、和室が無い状況になっている。かつては応接間であり、茶の間であり、寝室でもあった多機能な空間である和室が、メンテナンスの煩雑さや生活スタイルの変化という名目のもとに、数を減らしている。これは、日本人が長い時間をかけて磨き上げてきた住文化の喪失にほかならない。
和室の明確な定義はなく、様々な形が存在するが、主に畳、襖、障子、土壁、漆喰といった伝統的な自然素材によって構成される。い草の香りや畳の触感、襖による柔軟な空間の仕切り、光と影を重んじる空間。日本の気候風土に適応し、五感を豊かに育む日本の住文化が和室には含まれている。この独自の住文化を守るべく、2024年には建築史家や建築家、関連団体が連携し、「現代・和室の会」が発足した。同会が提唱するように、和室はユネスコ無形文化遺産に登録されるべき普遍的な価値を有している。和室を過去の遺物として保存するのではなく、世界に誇るべき日本のアイデンティティとして再定義し、国際社会へその価値を発信していく必要がある。
和室文化を守るための第一歩として、教育がある。現代・和室の会の内田青蔵会長によれば、現代の建築教育において、木造建築や和室の設計を深く学ぶ機会は極めて少ないという。日本の大学において木造・和室の設計を必修化し、伝統的な技能と現代の感性を融合させる可能性を広げるべきではないだろうか。また、住宅内はもちろん、教育・公共施設において和室の空間をあらためて創出し、子供たちが幼少期から和室に触れ、畳の上で過ごす心地よさを体感できる環境を整えることも大事だ。文化の継承は、知識と体験の両輪があって初めて成立する。
新しい和室の提案を
住宅を供給する側も、「施主のニーズがない」と切り捨てるのではなく、現代のライフスタイルに適合した「新しい和室の形」を積極的に提案すべきである。建築家には伝統素材を活かした革新的な設計を、建材メーカーには伝統的な技術の保存に加え、新しい素材やデザインを取り入れた和の建材の開発を期待したい。作る側が和室を再考し、その豊かさを改めて社会にプレゼンしていくことが、国内外の需要を掘り起こす鍵となる。
和室の需要を高めることで、失われつつある伝統的な木造建築技術や、畳、襖、障子といった伝統的建具の製作技術が継承され、国産材の振興支援にもなる。
国土交通省は新しい住生活基本計画に、「『和の住まい』の価値の再認識、それを支える伝統技能の継承と担い手育成、伝統産業の振興・活性化の促進」を掲げている。国を挙げて、和室文化を再考、復活に注力することで、伝統建築やホテル、高級住宅などの「ハレ」の和室だけではなく、暮らしと結びついた「ケ」の和室を再び増やしていけるはずだ。

