住宅単体から敷地全体での設計へ移行が進む

大手ハウスメーカーや建材メーカーの間で、庭を含めた外構提案を強化する動きが広がっている。高付加価値化戦略の一環として、建物単体ではなく、敷地全体を通じた暮らしの質の向上を訴求する流れだ。
例えばポラスグループの中央住宅は、開発する分譲地に積極的に庭や植物を取り入れている。その最たる例が、25年、埼玉県北本市に開発した「KITAMOTO SIGNATURE EDIBLE」だ。「エディブルランドスケープ」(食べられる景観)をコンセプトとし、各戸の庭には家庭菜園のスペースとなるポタジェや花壇、雨水タンクをプランニングし、外構には野菜やハーブ、果樹を育てエディブルな暮らしを提案する。
また、YKK APは、25年4月にYKK AP LANDSCAPEを設立。公共建築物のみならず、分譲住宅やリフォーム市場において、家と外を一体でデザインする提案を強化していく考えだ。
さらに、積水ハウスは、生物多様性に関する解析・評価などを行うシンク・ネイチャーと共同で、住宅建築地ごとに生物多様性保全効果の高い植栽の組み合わせをシミュレーションできる「生物多様性可視化提案ツール」を開発。建設地の住所や樹種数を入力すると、在来樹種の組み合わせ候補とともに、呼び込める鳥やチョウの種類数などが示され、庭づくりの効果を定量的に把握できる。さらに、在来樹種の多い庭ほど居住者のウェルビーイングや環境配慮意識が高まる傾向も確認されており、庭の価値が環境だけでなく人の暮らしにも波及することが示されつつある。
「後回し」にされる外構をどう提案するか
こうした供給側の動きが進む一方で、住宅取得の現場では、住宅価格の高騰により建物本体へコストが集中し、庭やエクステリアは「余力があれば整えるもの」として扱われがちだ。しかし注目すべきは、ベランダや、土間空間などを活用し、限られた面積の中でも緑を取り入れる動きが広がっている点だ。「緑と関わる暮らし」への潜在的なニーズは根強い。
このニーズを確保するためには、設計初期段階で外構を中心に置いたプランニングを行い、暮らしの中で庭が果たす役割や効果を具体的に可視化することが有効だろう。また、小規模で段階的に整備できる庭の提案なども重要になる。庭を「余剰部分」ではなく「暮らしの基盤」として位置付け直す視点が不可欠だ。
千葉大学予防医学センターの研究では、玄関まわりに植物がある高齢者は、ない場合と比べてうつの割合が16%低く、集合住宅では28%低いという結果が示されている。その背景には、植物の手入れを通じた近隣住民との交流の促進、日常的な身体活動の増加、自然との接触によるストレス軽減といった複合的な効果があるとされる。
住宅供給側には、庭の持つ価値を多面的に捉え直し、施主が迷いなく投資できる外構の積極的な提案が求められている。

