12 土に還る家をつくろう

循環型建築の究極の形を目指して

現代の住宅建築は、岐路に立っている。これまで利便性と効率化を求め、膨大な石油由来の資材を使い、使い終われば「廃棄物」として処理される建築物をつくり続けてきた。しかし、遠くない未来に確実に訪れる資源の枯渇と限界を迎える最終処分場の現状を前に、これまでの手法に代わる循環型の建築システムを構築していく必要がある。脱炭素社会の実現において、建築に求められるのは単なるリサイクルではない。素材のすべてが自然に分解され、土へと戻っていく「土に還る家」こそが、究極のサーキュラー住宅といえるのではないだろうか。

かつての日本の家づくりは、まさにこの「土に還る」姿を体現していた。地域に根差し、近隣の山から木を切り出して構造材とし、壁は土で塗り、屋根には瓦を載せ、内装には障子や畳を用いる。これらすべてが自然素材であり、役目を終えれば静かに土へと戻る循環の中にあった。しかし、近代化に伴う大量生産・大量消費の波の中で、住宅建築は化学建材を多用する形へと変貌を遂げた。

最先端の技術×地域固有の素材

こうした輸入材や化学製品に依存する現状は、地政学的なリスクに対して脆弱だ。現在、中東危機などの国際紛争によりサプライチェーンが分断され、多くの建材が供給困難に陥る事態が起こっている。ひとたび供給網が途絶えれば、日本の建築現場は立ち往生してしまう。この脆さを克服するためには身近な資源に目を向け、地域に根差した建築を現代の文脈で再構築する必要がある。

「土に還る家」の実現に向けた試みは、世界各地で進化を続けている。例えば、土そのものを構造体とする「ラムドアース(版築)」は、伝統的な建築方法でありながら、再評価され様々な現代建築に取り入れられている。スイスの建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロンによるリコラ・ハーブセンターや、世界が注目する建築家ビャルケ・インゲルス率いるBIGが設計し、26年3月に広島県三原市・佐木島で開業した「NOT A HOTEL SETOUCHI」では、現地の土を使い、その土地の風土を体現する強固な建築が可能であることを証明した。

また、農的資源を活用した「ストローベイルハウス」もある。乾燥した藁のブロックを積み上げ、土や漆喰で塗り固めるこの手法は、日本の農村地帯であれば、米づくりの副産物である稲わらをそのまま建材として転用でき、表面の漆喰を剥がせば、中身の藁はそのまま良質な堆肥として土に還る。「土に還る家」をつくることは、決して過去への逆行ではない。最先端の建築技術と地域固有の素材を掛け合わせることで、建物のライフサイクル全体を自然の摂理に適合させる試みである。それは地球環境を保護するだけでなく、地域の経済を活性化し、依存からの脱却を図る社会的自立にも結びつく。家を構成するすべての部材を自然由来にすることは難しいかもしれないが、「土に還る家」の実現を目指すことが、素材の見直し、技術革新につながっていくはずだ。