08 住宅の自然災害被害をゼロへ

ハードに加えリスク回避の仕組みづくりを

日本は、地震や洪水など自然災害が発生しやすい条件が重なり合ったところに位置しており、昔から日本人はこの環境の中で知恵を絞り、生きてきた。技術が発展した現代においても、自然の恐ろしさは変わらず、防災・減災の備えは、この島国で生きるための必須条件であるといえる。

これまで住宅業界は激甚化・頻発化する自然災害に対し、耐震・制震・免振技術や防水害の技術を高め、災害に強い家づくりに努めてきた。だが、未だ日本中のすべての住宅が災害に耐えうるものになっているわけではない。地震や水害の危険地域に住み続けている人もいる。30年以内の首都圏直下型地震の発生確率は70%、南海トラフ地震の発生確率は80%と大きな災害リスクの可能性も迫る中で、あらためて「住宅の自然災害被害ゼロ」を目標に掲げるべきではないだろうか。

まずは、防災の出発点として、すべての住宅を安全性の高い「命を守る場所」に変える。新たに建てる新築住宅はもちろん、特に旧耐震基準の木造住宅や、倒壊時に避難路を塞ぐ沿道建物に対しては、補助金に留まらず、固定資産税の減免措置や建替えを促す仕組みを構築し、既存住宅の耐震、耐水害化を進める。住宅事業者が協業し、これまで個々で研究・開発してきた住宅に関する防災・減災技術を共有することで、安全な住宅の普及がさらに加速することも考えられる。ZEHの普及をさらに進め、エネルギーと非常用給水を自給自足できる環境を構築することも、避難所の過密化を防ぎ、二次被害を最小限に抑えることにつながる。

居住制限に加え移住推進も

また、そもそも「危ない場所には住まない、住まわせない」というルールをもっと徹底すべきだろう。現状、「土砂災害」と「浸水(洪水)」のハザードマップで「レッドゾーン(特別警戒区域)」と「イエローゾーン(警戒区域)」となっている地域では、構造などの制限はあるものの新築住宅を建てることはできる。また、津波リスクがある地域での居住制限は、地方自治体が条例を用いて段階的に実施しているが、一律の居住禁止ではなくリスクの高さに応じて建物の建築を制限するなどにとどまっている。ただ、気候変動の影響により、従来想定を超えた水害が常態化している。住宅単体での防御には限界があり、今後はハザードマップで浸水や土砂災害のリスクが高いと判断された場所での新規立地は厳格に抑制すべきだろう。また、南海トラフ大震災などで津波の被害が予測される沿岸地域からの移住も国を挙げて推進する必要がある。

新しい住生活基本計画では、災害の危険性の高いエリアに係る積極的な情報提供、それに連動した市場を通じた立地の誘導の推進が示されている。居住者が自らの住まいの危険性を正しく把握できる環境を整備するとともに、供給する側もリスクのある場所で土地や家を売らないようにしていくべきだろう。

これまでの自然災害の教訓を前提に、ハードだけでなく、仕組みや意識などソフト面も変えていくことで、住宅の自然災害ゼロの目標へ近づいていくはずだ。