04 伝統技能をデジタル化しよう

日本の文化そのものを継承していくために

職人不足が深刻化するなか、生産面以外でも大きな課題がある。それが伝統技能の継承だ。

建築・住宅分野における伝統技能と言えば、木造建築における木組み、左官、建具など多岐にわたる。身の回りにあった素材を使い、気候風土に適した家をつくる知恵の結晶だ。

しかし、これらの知恵の継承が難しくなっている。技術の進化により手仕事が減り、伝統技能を発揮する場が減り、使う素材も無垢の木材が集成材や金属に、紙や土がビニールクロスなどに置き換わり職人技を発揮する機会が減っている。さらに、伝統技能を活かすような家づくりは大きなコストアップになる。また、現在求められる性能や機能を伝統技能を使った工法などで満たすには多大な手間がかかることも敬遠される要因の一つだろう。

そして何より後継者不足が大きな課題だ。職人自体が減るなか、技能の習得に長い年月を要する、徒弟制度を想起する、仕事が不安定で低賃金…等々、若年層にとっては非常に入職のハードルが高い。

自然との調和、共生など
伝統を現代に融合させる

こうしたなか、伝統技能のデジタル化に大きな可能性がある。

職人の動きをモーションキャプチャで記録すれば“職人の技”を数値化、見える化することができる。例えば、鉋をかける時の姿勢、重心移動、刃物の角度、力の入れ具合など言葉で伝えにくかった経験に基づく“勘”を可視化することで伝えやすくなろう。高精度センサーを活用すれば指先の感覚までも客観視することができよう。また、金物や釘などを使用しない継手・仕口といった構法を3Dスキャンすることでデータ化すれば、BIMへ統合することも可能になる。伝統技術を用いて耐震などのシミュレーションが可能になる、つまり伝統技能と現代の法規制の両立を図ることが可能になるわけだ。また、デジタル化によりロボットの導入も可能になろう。手作業でかかっていた時間の短縮が図れるだけでなく、AIを導入し伝統技能による大量生産が可能になるかもしれない。

例えば、重要文化財などをデジタルアーカイブで保存することは、修復時に役立つだけでなく、その再現も可能にする。文化の保存という点で非常に重要な取り組みだ。ただ、それだけではなく、デジタルデータをもとに新たな建築を生み出す、現代と融合させるということも大きなポイントではないだろうか。

伝統技能の継承は、家づくりの技術を残すということにとどまらず、日本の文化そのものを受け継ぎ、継承していくことに他ならない。そこには自然との調和・共生や持続性、地域固有の気候風土に基づく風景、さらには日本人としてのアイデンティティさえ含まれる。なぜ伝統技能を継承する必要があるのかを考えた時、デジタル化が持つ意味は大きい。