01 生活インフラをなくそう

住宅を小さなインフラへ変える

電気・水道・ガスといったライフラインに接続することを前提とした住宅のあり方が当たり前ではなくなりつつある。生活インフラから切り離し自給自足で生活できるオフグリッド住宅への取り組みが加速しており、住宅がインフラに依存する社会構造そのものを変えようとしている。

例えば、過疎化地域において一度整備したインフラは容易に縮小できない“固定費”であり、自治体に大きな負担を課している。特に高齢者の多い地域では、住む場所を変えたくない住民も多く、インフラを一カ所にまとめられないため、維持費が負担になっている。この構造を変える鍵の一つが、住宅側の自立である。

すでに技術的な土台は整いつつある。U3イノベーションズが山梨県北杜市で進める実証では、太陽光発電と蓄電池により電力を確保し、小型淡水化装置による水の浄化・再利用、バイオトイレによる排水処理を組み合わせ、電気・上下水道に依存しない生活を実現している。MUJI HOUSEの「インフラゼロでも暮らせる家」では、水循環システムやユニット化された構成により、生活に必要な機能を住宅内に集約した。さらに、グリーンエナジー&カンパニーは、25年に太陽光発電と蓄電池に加え、空気中から水を生成する仕組みを備えたトレーラーハウス「ゼロインフラASOBOX(アソボックス)」の受注を開始している。

従来では建てられなかった土地にも住めるように

オフグリッド住宅の普及は、単なるエネルギーや水の自立にとどまらず、「居住の分散化」を促す可能性もある。インフラ整備を前提としないため、住宅そのものを運び、設置するだけで生活が成立する。インフラ整備の制約から解放されることで、従来は住宅供給が難しかった山間部や離島にも、一定水準の居住環境を展開できるようになる。これは、人口減少下における国土利用の再設計にもつながる視点だ。また、災害時には迅速な居住環境の確保につながり、複数棟を組み合わせることで仮設的な“まち”を形成することもできる。

さらに、発展途上国などインフラ整備が不十分な地域で展開すれば、「住宅さえ建築すれば、すぐに現代的な暮らしを実現できる」という状況を生み出すことも可能になるかもしれない。住宅輸送のハードルが下がることで、住まいは「建てるもの」から「届けるもの」へと変わっていく。

インフラがなければ暮らせないという前提は、技術的には崩れつつある。こうしたなか、住宅業界が次に取り組むべきは、これらの技術をいかに標準化し、選択肢として社会に実装していくかだろう。必要に応じてインフラから切り離せる住宅は、今後の重要な価値となるはずだ。

住宅は、インフラに依存する存在から、インフラ機能を内包する存在へと変わっていく。住宅そのものを“小さな社会インフラ”として再定義する視点が求められている。