仲井 嘉浩 氏

(一社)住宅生産団体連合会会長/積水ハウス社長 

人口減少や少子高齢化が進む中、住宅市場を取り巻く環境は大きく変化しています。一方で、住宅に求められる役割はむしろ広がっています。脱炭素社会への対応、激甚化・頻発化する自然災害への備え、空き家問題への対処、子育て世帯や高齢者世帯を支える住環境整備など、住宅産業には多様な社会課題への対応が求められています。

住宅は人々の暮らしの基盤であり、安全・安心で快適な住生活を支える重要な社会資産です。変化する社会や多様化するニーズに応えながら、良質な住環境を提供していくことが私たち住宅産業に携わる者の使命といえます。

新たな住生活産業ビジョン
新築と既存住宅を両輪に

国の新たな住生活基本計画では、「人生100年時代の住生活基盤の再構築」と「市場機能の進化によるストック価値の最大化」が大きな方向性として示されました。住団連も計画策定に向けて提案を行い、その趣旨の多くを反映していただいています。

住団連ではこの夏、「住生活産業ビジョンVer.2026」を公表しました。新たな住生活基本計画の内容を踏まえつつ、良質な住宅ストック社会の形成に向け、住宅の検査・登録やストックの価値を評価する仕組みの充実、省CO2対策の強化、生産性向上や海外事業展開を支える環境整備、住宅リテラシー向上など、住宅産業が取り組むべき中長期的課題への方向性を示したものです。

良質な住宅ストックの形成に向けては、新築と既存住宅を両輪として進めることが重要です。高い省エネ性能、耐震性能、耐久性能を備えた住宅の供給を進めるとともに、既存住宅については適切な維持管理やリフォーム・リノベーションを促し、長く住み継がれるストックを形成していく必要があります。そのためには、住宅の検査・登録、住宅履歴情報の活用、適正な査定や流通の仕組みづくりなど、市場環境の整備が欠かせません。住宅の価値が適切に評価され、次世代へ円滑に引き継がれる仕組みを構築することが重要です。

新築住宅市場においては、取得環境が厳しさを増す中にあっても、住宅省エネキャンペーンや住宅ローン減税などの支援制度を活用しながら、質の高い住宅を安定的に供給していくことが求められています。将来にわたり価値を維持できる住宅を着実に供給することが、結果として良質な住宅ストックの形成につながります。

同時に、住宅産業は人手不足や高齢化といった課題に直面しています。引き続き生産性向上に向けたDXの推進、働く場としての魅力向上、人材育成や技能継承の強化に取り組むとともに、日本で培われた住宅技術やノウハウを国内外で活かしていく視点も重要と考えています。

住宅の省エネ化に加えて資源循環の取り組みも加速

環境問題への対応も引き続き重要な課題です。住宅の省エネルギー化は着実に進んでいますが、今後は建材の製造から施工、使用、解体・再利用までを含めたライフサイクル全体でのCO2削減が求められます。木材利用や資源循環の推進、住宅設備や太陽光発電設備のリサイクル体制の充実など、住宅産業全体で持続可能な社会の実現に向けた取り組みを一層進めていく必要があります。

具体例として積水ハウスの取り組みを紹介します。積水ハウスでは、戸建住宅のZEH比率は96%、ZEH採用累積は26年3月末時点で9万5776棟となりました。積水ハウスグループは、パリ協定の削減目標に整合させるため、2030年までに製品使用時のCO2排出量を2013年度比55%削減する目標を掲げています。25年度には、排出量が13年度比51.0%削減となり、目標達成に向けて順調に進捗しています。

資源循環の観点では、家がまた次の家の資源として循環する“House to House”の実現に向けた宣言を24年12月に行い、2050年に向けてリサイクル部材のみで構成される商品の提供を目指しています。

直近では、26年3月から大栄環境、AGCと3社共同で住宅改修に伴い発生する廃サッシから窓ガラスを回収し、元の窓ガラスと同等品質の窓ガラスへ再生する水平リサイクルの実証実験を関西圏で開始しました。また、25年12月には、大阪・関西万博の日本政府館の解体材再利用に取り組む「旅するCLT」を発表しました。KUMA LAB・東京大学と産学協働で、万博で使われたCLTパネルを建材として再利用して建築を行い、旅をするようにそれらが全国を巡回することを目指していきます。弊社の取り組みの一部を紹介しましたが、今後も団体として業界内外で連携を図りながら資源循環の取り組みを加速していきたいです。

近年頻発する自然災害への対応も欠かせません。熊本地震や能登半島地震の経験を踏まえ、災害に強くレジリエンス機能を備えた住宅ストックの整備を進めるとともに、災害発生時には一日も早く暮らしの再生が図られるよう、業界一体となった備えの充実が求められます。

住団連は、住生活基本計画および住生活産業ビジョンVer.2026で示した方向性の実現に向け、会員団体・会員企業とともに取り組みを進めてまいります。良質な住宅ストック社会の形成をはじめとする取り組みを通じて、住宅産業の発展と国民の住生活の向上に寄与し、住まいを通じた社会課題の解決と次世代へのより良い住環境の継承につなげていきたいと考えています。