社会変化に応える新たな認定・評価分野を創出
専門性を掛け合わせ解決に向けて貢献
1973年の設立以来、「BL部品認定」をはじめ建築・住宅分野の幅広い評価機関として関連産業に貢献してきたベターリビング(以下BL)。
社会構造やライフスタイルが激変する今、蓄積された高度な専門性を掛け合わせ、現場の人手不足やLCC(ライフサイクルカーボン)評価といった新たな課題に挑んでいる。

今から半世紀以上前の1973年、BLの前身である「住宅部品開発センター」が設立され、翌1974年から優良住宅部品(BL部品)の認定事業がスタートしました。当時は公共賃貸住宅をはじめ新築住宅が大量に建設されていた時代であり、現場施工の合理化、コスト低減、そして均質な性能・品質の確保が至上命題とされていました。その解決策として打ち出されたのが、工場で高品質に生産された部品を現場に搬入して組み立てる「住宅の部品化・工業化」の促進でした。
この時に確立されたBL部品認定の仕組みは、現在の目で見ても極めて先進的でした。なぜなら、製品そのものの性能などハード面と、供給企業のサービス体制や保証というソフト面の両面からアプローチしたからです。技術的性能を厳格に審査する一方で、企業側にはアフターサービス体制の確立や最大10年の無償修理保証、製造中止後最低10年間の交換パーツ供給体制を求めました。
そして、制度の核心であり最も画期的であったのが「BL保険」という強固なセーフティーネットです。製品の不具合や拡大損害だけでなく、製品自体の瑕疵に留まらず「施工・取り付けの瑕疵」に起因する不具合までも対象に含まれています。50年も前に施工の領域まで踏み込んで品質を担保し、包括的な保険でカバーする仕組みを作り上げた先人たちの先見の明には敬意を表したいと思います。
BL部品認定制度は、供給する事業者にとっては万が一のリコールや事故事象における負担を軽減する「産業支援」であり、生活者にとっては大きな安心を提供する「消費者保護」でもあります。この二つの側面を両立させた独自の制度は、日本の住宅産業が高度な工業化と品質向上を達成するにあたって、一定の役割を果たしてきたと考えています。
事業領域の拡大
専門性とネットワークの強み
BL部品認定の対象は公共賃貸住宅だけではありません。一般のマンション、アパート、戸建て住宅へと大きく広がっていきました。当初の4品目から始まった認定対象は、現在では67品目にまで拡大しています。
そしてBLという組織自体も、部品認定という「専門店」から、建築・住宅に関わるさまざまなニーズに応える「スーパーマーケット」へと事業領域を拡大してきました。現在はBL部品認定のみならず、「試験・評定 証明・認証等」「システム審査登録」「建築確認検査・住宅性能表示等」へと大きく拡大し、4つの主要な事業部門が競い合う幅の広い評価機関へと進化を遂げています。特に2000年代から本格化した建築物の審査・評価事業は、ZEHの普及や省エネ基準の適合義務化といった国策の動きに的確に対応してきた結果、昨年度は財団の売上の最大シェアを占めるまでに成長しました。
システム審査登録の分野では、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の実績が広がっています。日本ではまだ一般的ではないかもしれませんが、ISO規格に基づき、企業などの扱う個人情報資源を明確化し機密性を適切に管理するための仕組みを審査するものです。建築・住宅分野に限らず、多様な企業からのご依頼を受けて取り組んでいます。
このように、半世紀をかけて培ってきた技術の蓄積と高い専門性、そして有識者の方々や産業界とのネットワークを活用し、BLは建築・住宅業界をはじめとする産業界全体の多面的な課題解決に乗り出しています。
私たちが長年蓄積してきた試験・評価のノウハウや専門人材の力は、ルーチンの認定・審査業務だけに留まらず、政策的な要請に応える受託業務を通じた社会貢献の場にも幅を広げています。
その最も象徴的な事例が、能登半島地震における被災建物調査への参画です。倒壊した建物の原因究明にあたり、地下構造部分のデータを収集するミッションがBLへと託されました。「地面の下の、目に見えないが最も重要な領域」において、経験と技術力をもって政策上重要な調査を支える――こうしたことも、長年の試験研究事業を通じて培ってきた強みを活かす、社会に対する恩返しであると考えています。
独自の認定基準を制定・アップデート
社会のあり方やライフスタイルが変化すれば、住宅に求められる部品や設備の基準も変わります。BLは、社会・政策・産業のニーズに応えて、独自の認定基準を次々と制定しアップデートしています。
近年では、巨大台風から住まいを守る「防災安全合わせガラス」に加え、深刻な治安情勢を踏まえて新たに「防犯安全合わせガラス」というカテゴリーを新設して基準策定を行い、認定を開始しました。さらに、環境へのアプローチとして、太陽光発電(PV)と太陽熱利用(T)の双方の利点を一つのパネルに融合させたハイブリッドシステム「PVTパネル」の新しい認定基準を策定し、現在、第一号認定に向けた準備を進めています。電気と熱を同時に高い効率で回収できるPVTパネルは、今後の省エネ住宅における強力な選択肢となるはずです。
住宅業界が今、最も頭を悩ませている共通課題は「現場の担い手不足・職人不足」です。この問題に対し、BLは「住宅部品の側から現場の負担を減らす」というアプローチで検討を進めてきました。その答えが、新たに策定した「施工省力化ガイドライン」です。ユニット化・パネル化、加工作業の省力化などによる「作業時間の短縮化」、製品や部材・パーツの小型化・軽量化などによる「作業負担の軽減化」などを新たな評価軸として位置づけました。従来の安全・耐久・省エネという基準の上に、現場の労力を削減できる付加価値を備えた部品を順次認定していく計画です。これは単に製品を認定する基準としてだけでなく、住宅施工現場の持続可能性を守るための具体的な提言になれば、と期待しています。
新築中心から「既存ストックの有効活用・リフォーム」へと市場がシフトする中、BLでは改修用サッシや内窓といったリフォームに特化した住宅部品を認定してきましたが、特に集合住宅等のリフォーム現場特有の課題に着目した新しい基準の検討に着手します。「騒音・振動・粉じん対策ガイドライン」を踏まえ、認定基準の検討を順次進めていきます。近隣住民への配慮が不可欠なマンションリフォーム等において、工事のストレスを最小限に抑えられる部品を特出しして認定することで、リフォーム市場の拡大と質の底上げへの貢献を目指しています。
また、生活者や事業者がリフォームにふさわしい部品にアクセスしやすくなるよう、2025年7月に「人生100年時代のリフォーム応援ナビサイト」をオープンしました。このサイトもユニークな点は、事業者が提供する幅広い住宅部品を「健康・安全」「家計負担の軽減」「家事ラク」「防災・防犯」といった生活者目線のニーズから横断的に検索できる仕組みにしている点です。これまで、住宅の温熱環境と健康について文献やデータを集めてきた成果も活かしました。
次なる挑戦、LCC評価への対応と第三者認証の準備
現在、建築・住宅業界が迎えているパラダイムシフトの一つが、建築物の「ライフサイクルカーボン(LCC)」の算定・評価に向けた法的な枠組みの整備への対応です。
建築物省エネ法の改正に伴い、資材調達から解体に至る建築物のライフサイクル全体でのCO2排出量を見える化しようという包括的な枠組みが導入されます。このような動きの中で、今後は「自社製品や建物がどれだけ環境に貢献しているか、客観的な第三者評価が欲しい」というニーズが高まってくる可能性があります。
これまでBELSやCASBEEといった建物の環境性能評価で多くの実績を持つ私たちにとっても、LCCは計算方法や視野の広さが異なる未知で高度な領域です。さらに、建物を構成する一つひとつの建材、部品、設備のCO2排出原単位をどのように算定し、個別製品のCO2削減努力をどう正当に評価(見える化)していくか。そのノウハウを習得することも容易ではありません。日本全体でも専門家が極めて少ないと言われる分野ですが、私たちは2年後の法律施行をターゲットに見据え、現在、外部機関とも連携しながら体制整備と人材育成に総力を挙げて取り組んでいます。
将来的にはBL部品の認定と「LCC評価」をドッキングさせ、BL認定品の付加価値の一つとして「見える化」を図り、事業者にとって実利のある仕組みを構築したいと考えています。
半世紀前、、建設省が日本の住宅の「部品化・工業化」という旗を振り、それをBL保険という画期的な仕組みで支えたように、私たちはいつの時代も業界の皆様の挑戦を後ろから支えたいと願ってきました。
安全性、耐久性、省エネ性が優れていることは、もはや住宅において最低限の前提となりました。これからの住まいづくりでは、現場を救う「施工省力化」、社会を救う「ライフサイクルでの脱炭素」、そして生活者を守る「防災・防犯」といった付加価値を求めつつ、そのことを社会へ明示したいという要請も高まるでしょう。BLはこれからも第三者機関として客観的な立場から審査し、市場で正当に評価されるための証しを提供することを目指します。
さまざまな分野の企業や団体からのご相談やご依頼に対して、私たちの持つすべての専門性を掛け合わせて解決に向けて貢献したいと思います。
(聞き手:中山紀文・沖永篤郎)

