「ロングライフ戦略」を打ち出し、業界に先駆けて建物の長寿命化と長期保証体制を推進してきた旭化成ホームズ。2019年にはその呼称を「ロングライフ」から「LONGLIFE」へと刷新し、「建物」の維持管理だけでなく、「人」の視点に立った取り組みを一層強化している。
「家は20〜30年で建て替えるもの」という価値観がまだ根強かった1998年、旭化成ホームズは「ロングライフ住宅宣言」を掲げた。
当時の業界水準を大きく上回る「50年保証」を導入し、「自社で供給した住宅を生涯にわたってフォローし続ける」という強い決意を表明。創業1棟目からの建築・メンテナンス履歴を全てデータベース化して継承し続ける同社の姿勢は、その後の「200年住宅」構想から「長期優良住宅」へと続く、日本の住宅政策の流れにも多大な影響を与えた。
「当時は『50年もの保証が本当に市場に受け入れられるのか』という懸念の声もありました。しかし、創業時から愚直に積み上げてきた建築・メンテナンス履歴という『土台』があったからこそ、裏付けのあるロングライフを提供できたのです」(LONGLIFE総合研究所・河合慎一郎所長)。

ハードの安心から「住まい手」の安心の創出へ
1998年の宣言によって「アフターサービスの価値」を確立した同社は、2019年に戦略を次なるステージへと引き上げた。ブランド表現を「LONGLIFE」へと改め、建物から、そこに暮らす「住まい手(人・暮らし)」へとフォーカスをシフトさせたのだ。
「ハードのさらなる長寿命化は今後も追求し続けますが、住まい手の視点に立つと、ハードの提供だけでは不十分だという結論に至りました。相続、介護、住み替え、健康、将来の資産形成など、人生における課題は建物の性能だけでは解決できません。だからこそ、お客様の暮らしそのものに深く寄り添う必要があるのです」(河合所長)。この「人・暮らし軸」への進化を象徴するものが、2023年に設置された「LONGLIFEコンサルティング室」だ。
横断的ハブステーションで「全体最適」な解を
LONGLIFEコンサルティング室は、建物の相談にとどまらず、健康・資産活用・相続・介護など、暮らし全般の課題をワンストップで受け止める窓口だ。
例えば「リフォームしたい」という相談であっても、その背景には将来への不安や家族構成の変化など、多様な悩みが隠れている。従来のリフォーム提案では、その場限りの「部分最適」になりがちだが、同室ではベテランスタッフが、資産形成や健康まで見据えた人生の「全体最適」な解決策を提示している。
さらに特筆すべきは、社内の部門間・グループ間におけるシームレスな連携を促している点だ。LONGLIFEコンサルティング室とリフォーム、新築、不動産などの事業部門が連携を図りながら、住まい手にとっての「全体最適」な解を探る体制が構築されている。
22万超のオーナーと繋がる「HEBELIAN NET.」
「人・暮らし」に着目したLONGLIFE戦略を支えるデジタル基盤が、顧客向けWebサイト「HEBELIAN NET.」である。約30万棟あるヘーベルハウスやヘーベルメゾンのうち、実に19・8万棟以上という高い登録率を誇る。
同サイトでも「人」に焦点を当てたコンテンツを拡充している。その一つが、「災害コミュニケーションサービス」だ。地震発生時、オーナーが自己点検機能に回答することで、建物の被害状況を即座に確認できる。避難の要否を判断する助けとなるだけでなく、メーカー側も点検の優先順位を迅速に判断できるようになる。周辺インフラの状況を踏まえ、在宅避難が可能かどうかの判断を支援する機能も備えている。
さらに、防災サポート「備えNAVI」では、家族構成に応じた最適な備蓄品を診断・購入できる。賞味期限前のリマインド機能や、家族構成の変化に合わせた内容更新の提案などにより、無理なく続けられる「持続可能な防災」を実現している。
特筆すべきは、これら全てのサービスが、新築オーナーのみならず中古でヘーベルハウスを購入した「セカンドオーナー」にも提供される点だ。建物が受け継がれても変わらぬサポートを保証する姿勢は、既存住宅の価値向上や流通活性化といった社会課題の解決にも直結している。


さらなる進化に向けて社会・地域への視点も
「建物軸」の確立から「人・暮らし軸」の深化へと歩みを進めたLONGLIFE戦略は、今、さらにその先にある「社会・地域軸」への拡張を始めている。自社顧客という枠組みを超え、蓄積された知見やアセットを地域社会の課題解決に還元しようという試みだ。
「行政の方々からは、リソース不足により単独では地域課題を解決できないという切実な声を伺います。私たちは家を売るだけでなく、地域社会の土壌づくりやコミュニティ形成に誠実に向き合っていきたい。その信頼の先にこそ、新たな街づくりや未来の事業機会が生まれると確信しています」(河合所長)。
旭化成ホームズのLONGLIFE戦略が独自性を保ち続けているのは、過去の戦略を刷新するのではなく、「ハードの価値(高品質住宅)」を基盤に、「アフターの価値(長期保証)」、「ソフトの価値(人への寄り添い)」、共創「地域の価値(社会課題解決)」を重層的に積み上げているからに他ならない。
モノづくりから始まり、人の一生に寄り添い、地域の持続可能な未来を支える存在へ―。LONGLIFE戦略の進化は、「住宅産業は社会にどのような価値を提供できるのか」という問いに対する重要なヒントを提示しようとしている。

