積水化学工業 住宅カンパニー

工業化住宅の強みを生かしたアフォーダブル住宅商品開発

積水化学工業 住宅カンパニーは、生産・輸送の効率化により高品質と低価格を実現した木質系戸建住宅商品「グランツーユーFR」を販売開始した。住宅のアフォーダビリティ低下が社会問題となる中で、工業化住宅の強みを生かした〝原点回帰〟の商品で、一次取得層のニーズに応える。

「グランツーユーFR」の外観イメージ。フラットルーフの採用により、太陽光発電システムの搭載容量が拡大した

手が届きやすい価格を実現

同社は、工場で建物を箱型のユニットとして生産し、現場で組み立てることで、高品質と短工期、低コストを実現したユニット住宅「ハイムM1」を1971年に発売。以来、工業化住宅のパイオニアとして、半世紀以上にわたり日本の住宅の歴史を切り拓いてきた。このほど新たに開発した木質系戸建住宅「グランツーユーFR」は、生産・輸送を効率化することにより、高品質と低コストを実現した〝原点回帰〟の商品といえる。

商品開発の背景には、新築戸建てやマンションの価格上昇による住宅アフォーダビリティの低下がある。国土交通省が公表する不動産価格指数によると、全国の戸建住宅およびマンション価格は5年連続で上昇を続けている。人件費の急騰、建築資材・住宅設備価格の高止まりなどから、メーカー各社は製造コストの上昇分を販売価格へ転嫁せざるを得ず、これが市場全体の価格を押し上げている。一方で、買い手側の購買力はこれに追いついていない。足元の物価上昇に対し、多くの一般世帯では実質賃金の伸びが十分に追いついておらず、可処分所得が実質的に抑制されているのが現状だ。

この住宅アフォーダビリティの低下は、実際の受注動向にも影響しているという。同社マーケティング部 商品企画部 商品企画グループの豊田洋一グループ長は、「家を買いたくても買えない人が多くいる。とりわけ地方都市においては、所得水準に対して住宅価格のギャップが大きく、都市部以上に住宅取得のハードルが上がっている。第一次取得層の受注が苦戦する中で、特に若い世代のニーズにしっかり応えなくてはいけないと思った」と開発のきっかけを説明する。

近年、大手住宅メーカー各社は、高価格帯の富裕層向け商品にシフトする傾向が顕著であり、それに伴って各社とも棟単価の上昇が続いている。同社もその例外ではなく、25年10月には35坪で約5000万円強からという高価格帯のフラッグシップ商品「ELVIA(エルビア)」を投入し、邸宅志向のニーズに応えるブランド構築に努めている。今回の新商品「グランツーユーFR」はその対極であり、若い一次取得層へ向けた「アフォーダビリティの追求」という目的で開発された。販売価格は3・3㎡(1坪)あたり80万円台後半からに設定(延床面積 99・58㎡、モデルプランにて試算。消費税込み、太陽光発電や蓄電池、空調システム等の主要設備を含む)。大手住宅メーカーのセミオーダー商品としては極めて手が届きやすい価格を実現した。

木質初のフラットルーフ導入

豊田グループ長は「私たちが目指したのは、セキスイハイムらしい高性能な品質、快適性、そして高い耐久性を保持したまま、いかに求めやすい価格で提供できるか。約1年半以上、あらゆる角度から知恵を絞り、議論を重ねてきた」と語る。

高品質かつ低価格を実現できた最大の理由は、同社の木質系住宅として初めて導入した「フラットルーフ」にある。従来の木質系商品で採用していた傾斜屋根は、工場で居室ユニットを製作した後に、別建ての屋根部材を現地へ輸送し、現場で職人が屋根を組み上げる必要があった。これに対し、フラットルーフの採用により、工場内で居室ユニットの上に屋根を取り付ける工程までを完結させることが可能となった。これにより、現場での作業工程を約10%削減。建設現場での作業負担を大幅にカットするとともに、安定的な施工管理を確立した。

さらに、この形状変更は輸送効率化においても効果をもたらす。従来の傾斜屋根商品では、1邸あたりの部材搬送に大型トラックが10台必要だったのに対し、フラットルーフの採用により屋根部材と居室ユニットを同じトラックで運べるようになり、7台への削減(延床面積99.58㎡のモデルプランの場合)に成功した。実質3台分のトラック削減は、物流業界が直面するドライバー不足への解決策にもつながる。また、1邸あたりの輸送に伴うCO2排出量は約0.9t削減されるなど、環境面でのメリットも生む。

低価格でも、セキスイハイムブランドが誇る快適性とレジリエンス性を妥協していないのもポイントだ。フラットルーフの採用により、太陽光発電システム(PV)の搭載容量は従来の傾斜屋根の4.8kWから7.8kWへと拡大(延床面積99.58㎡のモデルプランの場合)。このPVに、蓄電システム、HEMSを組み合わせることで、「なるべく電気を買わないエネルギー自給自足型※の暮らし」を実現。また、1階部分には同社独自の第1種換気全室空調システム「快適エアリー」も標準装備する。

※すべての電力を賄えるわけではなく、電力会社から電力を購入する必要がある。

性能に加え、ターゲットであるミレニアル世代およびZ世代の感性に合わせたデザインにもこだわった。外観は、フラットルーフがもたらすシンプルで四角を基調とした美しいシルエットを特徴とする。内装においても、若い世代が好む「白」や「グレージュ」などのニュアンスカラーを基調とした4つのスタイルをパッケージ化。手軽におしゃれで機能的な住まいを実現できる「タイパ」と「コスパ」の両立を意識した。

工場での組み立ての様子

販売開始以来、営業担当者からは、価格と性能のバランスが良く自信を持って訴求しやすいと好評価を得ているという。すでに各地の住宅展示場や分譲地では、若い世代からの問い合わせや商談が活発化している。豊田グループ長は、「ようやく『原点回帰』と言える商品を打ち出すことができたが、工業化住宅を進化させる余地はまだある。現場の人手不足という課題に対して、工場で極力つくる体制をさらに突き詰めていきたい」と力強く語る。

低価格かつ高品質な「グランツーユーFR」は、工業化住宅だからこそ実現できた商品であり、原点回帰でありながらこれからの日本の住まいづくりのあり方に一石を投じている。